85. 四季草花文(しきそうかもん)
四季折々の草花や草木を取り合わせて、文様化したものです。
写実的に、またはデザイン化して、能装束や小袖、帯などに用いられてきました。
上品で優しい趣きがあり、季節を問わない柄ですので、
現代でもあらゆる種類の着物や帯に多用されます。
86. 刷毛目文(はけめもん)
刷毛に染料をつけ、布の上をさっと掃いたような模様です。
濃淡のあるかすれた感じが自然で独特の面白みがあり、着物や帯に使われます。
もともとは陶器の装飾技法の一つで、朝鮮李朝の作品に見受けられます。
刷毛目は普通直線で描かれ、縦横両方向ありますが、
まれにゆるい波形のものもあります。
87 道長取り(みちながどり)
継ぎ色紙(染めた和紙を手でちぎって貼り合わせた料紙のこと)のように、斜めにゆるやかに流れ、変化に富む曲線で囲んだ模様のことです。
藤原道長がこの料紙を好んだために付けられた名前で、平安貴族の好みに合った、その上品で典雅な雰囲気を生かし、留袖、訪問着、袋帯など礼装用アイテムに多く使われる模様です。
88. 紗綾形(さやがた)
卍の字を崩して組み合わせ、連続模様としたものです。桃山時代に明から伝わった織物である「紗綾」の地紋に使われていたために、この名が付きました。
端正で品格のある雰囲気から特に武家に好まれ、
江戸時代には織物にも染物にも多用されました。今も白生地の地紋をはじめとして、
帯や着物の文様の一部分として使われます。
89. 波兎文(なみうさぎもん)
逆巻く波、白い泡を噛む波頭、その上を高々と飛び越えていく耳の長い兎。
いかにも流麗で躍動感にあふれた文様です。
波と兎という不思議な取り合わせは、
謡曲「竹生島(ちくぶしま)」の一節、月海上に浮かんでは兎も波を走るか 面白の浦の気色や・・・、に想を得たもので、月世界の兎が湖面に映り込んで、あたかも水上を走るかのように見える光景を描き出しています。
このダイナミックなデザインは江戸初期に大いに流行し、 さまざまな工芸品に同種の図柄を見ることができます。
ただ可愛らしいだけでない、 外性に富んだ兎の文様として現代にも愛好されています
。
90. 龍文(りゅうもん)
龍は、中国古代の神仙思想に由来する想像上の動物で、鳳凰と共に瑞獣の代表とされてきました。古代中国の天子の衣服の文様の他、服飾品にも数々取り入れられています。
水中や地中に住み、時に空中を飛行し、雲や雨、時には稲妻を放つという言い伝えから、雲や雨と一緒に描かれることがあります。
正倉院裂の中にも龍を意匠化したものが見られ、室町から江戸時代にかけての金襴や緞子、能装束や歌舞伎衣装にも多く見られます。
91. 鯉紋(こいもん)
鯉は黄河の急流にある龍門と呼ばれる滝をも登り、やがて龍になるとも言われる中国の故事にちなみ、出世魚として古来より珍重されました。
名物裂の荒磯緞子にも見られ、江戸時代の浴衣の柄に多く用いられました。
波間の鯉、鯉の滝登り、鯉尽くしなど多数のバリエーションがあり、絵絣にも織られます。
92. 菊菱文(きくびしもん)
菱文は、四本の平行線で囲まれた四辺形を基本とする文様で、有職文様の一種です。
直線で構成され織りに適した菱形は、その角度で形の動きや表情が変わり、様々なバ
リエーションが生まれました。それぞれに分かり易い雅な名前がついています。
菊菱は、菊の花を菱形に構成した、シンプルながらも洗練された文様です。
着物や帯に多用される他、家紋にも見られます。
93. 団扇文(うちわもん)
扇子を丸くして柄をつけて使いやすくしたのが団扇です。
女竹の節のちょうどよいものを選び、節の上から骨の数に裂いて、表と裏の紙を別々
に貼り付け、上部の骨をはさみで切って仕上げます。
染め帯や小紋などに好まれる団扇柄は、盛夏をイメージさせるモチーフですので、八
月いっぱいまでの着用が基本とされます。
94. 市松文様(いちまつもんよう)
歌舞伎役者の初代佐野川 市松(1722-62)が舞台でこの文様の袴をはき、爆発的に流行しました。
特別にどうということのない四角形の連続ですが、一つずつの目のコントラストが強いので、インパクトに富みます。このコントラストを利用して目の配色を変えることにより、無限に変化する文様が生まれます。
日本に限らず世界中で古くから用いられてきた割付文様の一種で、市松の中にさらに
細かな文様を入れ込んだ複雑な表現も可能です。
95. 鈴文(すずもん)
古来より、神事や祭祀に用いられてきた鈴は、後に楽器としても使われるようになりました。形の美しさから着物の文様に取り入れられ、鼓や烏帽子と組み合わせることもあります。
子供の衣装や小紋の柄として使われます。
96. 格天井文(ごうてんじょうもん)
格天井は、方形に組んだ木の上に板を張った天井のことで、 神社仏閣に多く見られ、
間の部分にはその時代の雰囲気を表す壮麗、重厚な絵が描かれます。
格天井文は、天井画のように格子の中に様々な絵柄を収めた文様をいい、 礼装の着物にや帯によく使われます。
97. 雅楽器文(ががっきもん)
大太鼓、琵琶、篳篥(ひちりき)、笛など、
雅楽を演奏する時に用いる楽器を文様化したものです。
典雅な形には品格があり、晴れ着に向く文様ですが、 小紋風に小さな柄に表現して楽器尽くしとしたり、 草花を添えることもあります。
王朝の雅に通じる文様ですので、秋草に横笛と琴を組み合わせたり、 紅葉や幔幕(まんまく)に大太鼓を取り合わせて、 文学的な意味をもたせることもあります。
98. 万寿菊文(まんじゅぎくもん)
尾形 光琳の画風に影響を受け、
江戸中期に一世を風靡した文様様式を総称して「光琳模様」と言います。モチーフの細部を簡略化して、細くまた太く、
調子を変えた線で柔和に表現するところに、その特徴があります。万寿菊文はその代表的な文様の一つで、菊の花弁を省略し、勢いのある曲線で菊花のこんもりとした量感を 見事に表現しています。
秋のたわわな実りの季節を表す、
可愛らしさとモダンさを兼ね備えた文様です。
99. 撫子文(なでしこもん)
秋の七草のひとつで、八、九月頃、淡紅色の可憐な花を咲かせます。
文様としては、鎌倉時代頃から調度や衣服に使われ始め、 比較的歴史の古い文様の一つです。
秋の七草文様として他の七草と一緒に使われることもありますが、 単独で用いられた時は夏の趣が強く、 花期が長いことからも「とこなつ」の別名を持ちます。
単・薄物の着物や帯、また浴衣の文様としても根強い人気を誇ります。