シリーズ 68~84 文様図鑑
68. 吹き寄せ文(ふきよせもん)
いろいろな木の葉が風に吹き寄せられた様子を描いた文様で、松葉、柿の葉、松毬(まつかさ)、銀杏などをバランスよく散らせます。 本来は秋から初冬にかけての柄ですが、近年は梅や桜などを添えることも多くなりました。 その風情のあるネーミングにより、古くから日本人には親しまれた文様で、菓子や料 理の名前にも見かけられます。
69. 唐花文(からはなもん)
その名のとおり中国から渡来した花形の文様で、日本では奈良時代から見られ、その 後徐々に和様化しました。花弁は4枚のものが基本ですが、時代の変遷とともに様々 な形に変化していき、画像のように、現在ではかなりモダンにデフォルメされたもの も見受けられます。 唐花といっても特定の花を指すのではなく、例えば牡丹のような唐風の花を唐花と呼 びます。多弁花をかたどる<宝相華(ほうそうげ)文>とも通じるものがあり、時と して同義に用いられます。
70. 鹿の子絞り(かのこしぼり)
染織品に文様を表すために、織機や筆、針や糸などの道具を用いますが、 その際にその技法独特の図様が表れることがあります。 鹿の子絞りはその中の一つであり、文様としてすっかり定着しています。 小鹿の背の斑点に似ていることからこの名があり、 別名<疋田(ひった)絞り>、<疋田鹿の子>とも言います。 絞り染めだけでなく、染めや織りの技法としても <染め疋田><鹿の子文>として表現されます。 着物、羽織、帯はいうにおよばず、 長襦袢や帯揚げなどにも幅広く用いられています。
71. 源氏香文(げんじこうもん)
香の香りを当てる「香合わせ」という、平安時代の宮廷遊戯から発祥した文様。 香合わせの際に使う符号に花模様をあしらい、源氏物語五十二帖に合わせて(源氏物 語の本来は五十四帖ですが、最初と最後の巻は除かれているため)それぞれの符号に 名がついています。 幾何学的な形に優雅な物語性が加味され、古くから愛好されました。巻名やその内容 に関係する草花や器物を添えたり、図の中に小柄を詰めて表現したりすることも多く、晴れ着や帯から浴衣まで、幅広く用いられます。
72. 桜楓文(おうふうもん)
春を代表する花である<桜>に、秋の<楓>を組み合わせて一つの文様にしたもので す。 古くから絵画の題材とされるほど、日本人の嗜好に合った文様として、広く染織品に使われています。 季節を問わないという点でも、着物や帯の文様としては便利です。
73. 牡丹唐草文(ぼたんからくさもん)
中国では百花の王とされる牡丹に唐草を組み合わせた文様。 正倉院の宝相華(ほうそうげ)文様の流れを受け継ぎ、名物裂や陶磁器など中国からの舶来品の影響下に、日本に定着しました。 重厚で品格のある雰囲気から晴れ着用に用いられることが多く、現代でも着物や帯に 愛用されています。
74. 角通し(かくとおし)
ごくごく細かい正方形が整然と一面に連なるように染め出した、小紋柄のことです。 もともとは江戸小紋の柄でしたが、数ある中でも「鮫」「行儀」とともに、いわゆる 小紋三役の一つとして別格の格の高さを持ちます。 紋付きにもでき、幅広い場で装うことができる柄ゆきです。
75. 更紗文様(さらさもんよう)
更紗とは、室町時代から江戸時代初期にかけて インドやジャワ、ペルシアなどの異国から渡来した染めの木綿布のことです。 人物、鳥獣、樹木、草花など異国の文物を彩り豊かに表現した これらのエキゾチックな文様の総称です。 日本では木綿に限らず絹にも染められ、また現代では織り帯にも見られます。 技法的にも本来の更紗同様、手描きと型染めの両方の手法が用いられます。 格調高い本格的な更紗裂写しから、 更紗風草花模様など洒脱にアレンジしたものまで、 更紗模様の意味する範囲は広く、その趣味的な雰囲気が好まれています。
76. 小桜文(こざくらもん)
小さな桜の花、または花びらを一面に散らした文様です。 江戸小紋の代表的な柄の一つで、 桜の花びら型の道具を使って切り抜いた型紙で染め上げます。 かつては多く、鎧に用いられましたが、 現代では着物や長襦袢、あるいは半襟などに 年齢を問わず好まれています。 また、鹿皮に漆で柄を置く<印伝>にも使われ、袋物等にされます。
77. 束ね熨斗文(たばねのしもん)
熨斗アワビの形を表した文様。 熨斗は、アワビの肉を薄く削いで引き伸ばし、 紙の間にはさんで祝儀の進物や引き出物に添えたのが始まりです。 多くは数本を束ねた「束ね熨斗」として表現されますが、 その他にも、先が勢いよく跳ね上った形状が威勢のよい江戸っ子に好まれた 「暴れ熨斗」などのバリエーションがあります。
吉祥文様として、礼装の着物などに使われます。
78. 毘沙門亀甲文(びしゃもんきっこうもん)
亀甲を三つ、テトラ型に連ねて連続させた文様の総称。毘沙門天が着用している鎖鎧 の鎖の表現が似ていることに由来します。 白生地の地紋や帯の柄によく使います。 毘沙門天とは、北方世界の守護神で、日本では七福神の一つとして信仰されていま す。
79. 亀甲文(きっこうもん)
正六角形の幾何学模様で、亀の甲羅に似ていることからこの名があります。 長寿吉兆を祝うめでたい柄として、平安時代に有職文様として定着して以来、各時代 を通して着物の柄のみならず各種工芸品でも大変に好まれてきました。 枠内に花菱を入れて「亀甲花菱」、上下左右に連ねた「亀甲つなぎ」(画像)、中に 小さな亀甲を入れた「子持ち亀甲」など様々なバリエーションも見られ、礼装用の留 袖や袋帯から、亀甲絣と呼ばれる絣織物まで、広く用いられています。
80. 橘文(たちばなもん)
橘はみかんの一種で、雛の節句の飾りにもあり、古来より親しまれてきました。 京都御所紫辰殿(ししんでん)の右近の橘が有名であることもあり、 格調の高い文様として、留袖や振袖、訪問着、 付け下げなどの礼装用着物に多く用いられます。 橘と言えばその実を指し、 花を合わせたものは<花橘>と言って区別することもあります。
81. 藤紋(ふじもん)
マメ科のつる性落葉木である藤は、その美しさが古くから愛され、 平安時代後期、藤原氏全盛の時に文様として完成されました。 有職文様にも多く見られます。 藤立涌(ふじたてわく)、藤の丸、巴(ともえ)藤など 多くのバリエーションがあり、藤を使った家紋も50種類以上あります。 単独で用いられ、写実的に表現された場合は、 晩春、初夏の季節感が強調されます。
82. 蚊絣(かがすり)
蚊が群がり飛んでいるような、極めて細かい絣文様の総称。 一般的には、経緯の絣糸で、十字形の文様を織り出したものです。 絣の基本形の一つですが、織るには高度な技術が要求されます。 地味な雰囲気ですが、男物や年配の婦人物の文様として好まれます。
83. 子持ち縞(こもちじま)
太い線に沿って細い線を平行に配した縦縞文様のことで、 太い縞の片側だけに細い縞を添えたものを <片子持ち>、画像のように、両側に添えた <両子持ち>がある。 バリエーションとして、二本の太い縞の間に細い縞を一本入れたものは、 婚礼の時の器物や衣服などに、祝いの印として用いられたりします。
84. 紫陽花文(あじさいもん)
紫陽花は万葉集にも詠われているように、 かなり古くから日本人の生活に溶け込んでおり、 園芸化されたのは、鎌倉時代です。 青紫色の大きな花が好まれて、文様としては江戸時代から用いられるようになり、 陶磁器や蒔絵などの工芸品に秀逸な作品が多く見られます。 現代では、着物や染め帯、浴衣に多く意匠化され、初夏の季節感を表現します。



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