1. 矢羽根文様(やばねもんよう)
矢羽根は矢の上部につける、鷲、鷹、鳶などの羽根のことで、
「矢羽」(やば)ともいいます。
形や羽の斑文の面白さから文様化され、並列した矢羽根が美しく意匠化されたものが、桃山時代の胴服にもみられます。
さまざまなバリエーションが見られますが最も知られているのがこの画像にもあるようなパターンでしょう。
江戸時代、大名家の奥女中の制服として扱われていた文様です。
近代では、その形と線とを生かし、様々な染職の文様に使われています。
写真は、お召しです。
2. 葵文様(あおいもんよう)
二葉葵の葉を文様化したもので、形や組み合わせにより、立ち葵、葵巴(あおいともえ)、葵唐草などのバリエーションがあり、着物や帯に多く用いられています。
紋章にも多く見られ、二葉葵は京都賀茂神社の神紋とされ、また三つ葉葵は徳川家の紋章としてあまりにも
有名です。
江戸時代には葵紋の使用は厳禁されていました。
芙蓉によく似た花の咲くアオイ科の花葵(立葵)ではなくウマノスズクサ科の小さな花が土に埋もれるように咲く植物です。
写真は、羽織(部分)
3. 葡萄唐草文様(ぶどうからくさもんよう
地中海沿岸地域では、古くから葡萄の栽培が行われました。武道は、豊かな実りを象徴する神聖は樹と見なされてきました。ギリシャからシルクロードを経て中国に伝わり、日本へは飛鳥・奈良時代に伝わった葡萄唐草文様は 奈良の正倉院に納められた錦や綾の中に 見事なものをいくつか見出すことができます。
葡萄唐草文の再びの流行は桃山時代。ただ、奈良時代のものがかっちりとデザイン化されていたのに対し、桃山時代のそれはかなり絵画的で、葉も蔓も伸びやかに描かれています。それから栗鼠がつきもののように書き添えられているのも大きな特徴です。
奈良時代の初めに日本に伝わり、長い空白の時期を経て再びの流行を見た葡萄唐草文。その生命力の豊かさと長さは、豊穣の象徴としての文様の意味と重なります。
写真は、紋織り着尺
4. 竹文様(たけもんよう)
竹は、松、梅とともに冬の寒さに耐える歳寒三友の一つとして、中国で古くから愛され、日本にも伝わりました。
竹文様は、竹の幹、節、葉などを図案化したものを指しますが、松、梅とともに吉祥文の一つとして広く親しまれています。
高潔な雰囲気を持ち、しなやかで強く、折れることのない竹は、その風情の美しさから詩歌に詠まれ、また染織の文様としては辻が花染や能衣装、小袖などに様々に図案化されてきました。
単独に用いられる場合もありますが、雪が積もった雪持ち竹、竹と鶴など、他の文様と取り合わせても使われます。
写真は、手描き小紋
5. 桜文様(さくらもんよう)
桜は古くから。どの時代にも愛されてきました。和歌や絵画にも取り上げられ、現在、日本の国花とされるように、「花」と言えば桜を指すことが多いようです。
文様に表されるようになったのは平安時代ごろからです。
ちなみに万葉集においては、梅を詠んだ歌が百数十を数え、約四十首の桜を圧倒
していまいたが、百人一首では梅一首、桜六首ち逆転しており、平安時代を境に日本人の美意識の変化を垣間見ることができます。
代表的な春の花ですが 最近では酢亜実的に描かれた桜柄以外は、季節を問わずに身につけるようになってきています。
写真は、刺繍とアップリケの八寸帯
6. 梅文様(うめもんよう)
梅を図案化した文様の総称で、梅の花弁の文様を梅花文、梅の花が枝についている文様を枝梅文、梅の木全体を梅樹文と、特に区別する場合もあります。
梅は「百花のさきがけ」というように、厳寒の中で香り高く咲き始めるので、古来より東洋で尊ばれてきました。
8世紀の初めに中国より渡来し、吉祥文様として各時代に絵画や工芸品の名品が作られています。また、家紋にも、多くの種類が見られます。
きものや帯でも、新春一番に着る柄として親しまれ、品格を重んじる礼装から、春の訪れを感じさせるしゃれ着や染帯まで、幅広く愛用されています。
写真は、パッチワークの八寸帯
7. 鳳凰文様(ほうおうもんよう)
古くは中国で尊ばれた想像上の瑞鳥で、麒麟(きりん)、龍、亀と共に四瑞とされます。
鳥の王と位置付けられ、その雄を鳳、雌を凰と称し、盛天子出生の喜ばしい兆しとして出現すると伝えられています。
理想的に装飾化されており、鶏の頭に燕の顎、蛇の首、亀の背中、羽に五色の紋があり、五色絢爛にして梧桐に宿り、竹の実を食す、とされています。
日本には奈良時代に伝わり、正倉院の錦やその後の有職織物、建築や工芸品にも見ることが出来ます。姿形の華麗さゆえか四瑞の中でも最も愛されている文様であり、現代でも格調高い吉祥文様として着物や帯に多様されます。
写真は、刺繍袋帯
8. 雀文様(すずめもよう)
雀は古くから絵画や文様の題材とされ、鎌倉時代の絵巻にも様々に意匠化されています。二羽の雀が羽を広げた形を図案化したものは「雀形(すずめがた)」、丸々と肥太った雀の子、または寒気を防ぐために全身の羽毛を膨らませてふっくらと見える雀は「ふくら雀」と言います。
また、他の文様と組み合わせて用いられることも多く、「稲穂に雀」は秋の文様、また「竹に雀」の意匠は仙台藩伊達家の紋章として有名です。
写真は、広瀬絣
9. 亀文様(かめもんよう)
「亀は万年の齢を経、鶴も千代をや重ぬらん」(謡曲・鶴亀)といわれているように、亀は鶴と並んで長寿であるとされていることから、古来、動物の吉祥文様の代表的なものです。霊獣の1つとして描かれた「霊亀」や、年老いて緑苔が生じた姿を描く「蓑亀」、また甲羅を幾何学的にアレンジした「亀甲」など、そのバリエーションも多くあります。
留袖の裾模様などに、よく用いられています。
写真は、亀刺繍袋帯
10. 鉄線花紋(てっせんかもん)
鉄線はキンポウゲ科の落葉性つる植物。中国原産で寛文年間(1661~73)に渡来し観賞用として栽培されました。初夏に白や紫の花を咲かせ、その優美な姿が好まれて、文様や紋章に取り入れられてきました。
桃山時代の能装束や小袖には、鉄線を唐草のように文様化したものが残されています。
友禅や紅型にも多く見られ、現在も広く愛好されています。
写真は、藍ロウケツ染小紋
11. 宝尽くし文様(たからづくしもんよう)
元は宝物を集めた中国の文様ですが、日本風にアレンジされて現代に至ります。
構成要素は、思いのままになる「如意宝珠」、身体が隠れて災難から身を守る「隠れ蓑」「隠れ笠」、打てば宝が出る「打ちでの小槌」、貴重品を守る土蔵の「鍵」、宝物を入れる「巾着」、金を量る「分胴」、仏宝の「丁子」「花輪違い」、知恵を表す「宝剣」、怨敵退散の「法螺」などです。
これらは時代によって多少の変化があり、全てが揃わなくても宝尽くしと呼ばれます。福徳を呼ぶ代表的な吉祥紋として、晴れ着などに多用されます。
写真は、白地宝尽くし小紋
12. 鱗紋(うろこもん)
三角形といくつも、その頂点を合うように組み合わせて配列した文様で、魚の鱗に似ているためにこの名があります。
小紋や帯の意匠、または着尺の地紋に用いられ、一方、能や歌舞伎においては、鬼女や蛇の化身の衣装に使われます。
女性の厄除けの文様としても有名で、身に付ける風習も残されています。
写真は、鱗模様長襦袢地
13. 鼓紋(つづみもん)
鼓は、円筒状で中空の胴に皮を張って鳴らす和楽打楽器の総称です。小鼓の優美な形を文様化した鼓紋は、その貴族趣味で優美な雰囲気が好ましく、着物や帯によく使われます。
鼓の両端に張った革の丸い面や 調べ緒と呼ばれる紐、 また胴部分などを巧みに意匠化して表現されます。
写真は、すくい綴れ名古屋帯
14. 麻の葉紋(あさのはもん)
六角形状に六個の菱形を結び付けた文様で主としてその連続文様を指します。「麻の葉繋ぎ」とも言われます。形が大麻の葉に似ているので、この名があります。
麻は生長の早い草で、種を蒔いて3ヶ月もすると2メートルを越します。
その成長の早さと丈夫さにちなみ、子供の産着として広く用いられてきました。
また、成人の着物や襦袢のほか、絣織物にも多く使われています。
15. 葵文様(あおいもんよう)
水が流れているさまや池に溜まって
いるさまを図案化した文様で、
弥生時代の銅鐸にも見られるように
たいへん歴史のある文様です。
「流水文」は曲がりくねって水が流れる様子を意匠化した文様で
固有の形を持たない水であるがゆえに、優美にも勇壮にも表現できます。また、渦を巻いた水文は「観世水」という固有の名が付けられています。
水文は車や筏、千鳥などと取り合わせたり、風景を構成したりと多種多様に使われます。
水文自体は年間を通じて使え
組み合わせる文様によって季節感が添えられます。
16. 鞠文様(まりもんよう)
着物の文様としてのまりには
手でついて遊ぶ<手毬>と
足で蹴る<蹴鞠>の二つがあります。
これは、御殿毬を文様化したものです。
もともとの手毬は ぜんまいの綿やおがくずを芯に 綿糸を固く巻きつけたものですが、
江戸後期に流行した、五彩の絹糸で巻いた手毬を 特に御殿毬と呼んでいます。
色彩の華やかさと愛らしい形が好まれ、
特に子供のきものや染め帯に多く使われる意匠です。
写真は、綴れ八寸帯